すると彼
『あー…順番が逆になっちゃったか…』と
何やら納得したみたいで。
「じゃぁ先に僕の口から言わせてもらうかな」
さっきまでわたしが座っていた席に勝手に腰掛け
テーブルに肘をついてフッと悪戯な笑みを浮かべて言う。
「緋奈星さん、キミと僕は婚約するみたいだよ」
まさかの婚約宣言を―――
「・・・・え?」
こ、婚約って…
なに、何の話…?
「そういう事っぽいから。
改めて宜しくね」
「えッ!?ちょっと待ってくださいッ」
初対面の相手から一方的にそんな話をされて
ごく普通に、冷静に…なんて無理に決まってる。
「どういう事なのか
ちゃんと説明してください」
「まぁまぁ、落ち着いて。
とりあえず座ったら?」
少しムッとしながら詳細を求めたのに
『ね?』って悪意あるウィンクで同席を促してきて
至って他人事すぎる。
「珈琲でも飲みながら話そうか」
大事な話をしているというのに
彼は呑気に『待ってて』と席を立ち
カップの準備まで始めてしまい
一向に答えようとしない。
マイペースなの?
それとも故意?
全然ついていけない…。
「急な話すぎてイマイチ事態が飲み込めない…。
アナタとわたしの父との関係も、本当に婚約なんてするのかも…」
「婚約はたぶん本当だと思うよ」
たぶんって…



