「テーブルはもう大丈夫だけど、こっちの汚れちゃったのはさすがにどうにもならないか…」
片付けを手伝ってもらっている傍らで
呑気にイケメン分析なんかしていたら
彼から『これどうしよ?』って話し掛けられ
目が合ってしまった。
「あ、それはもう仕方ないので…。
ありがとうございます」
集めた本を持って立ち上がり
ごく普通に、冷静にお礼を言ったつもりだけど
…ジーっと見つめてしまった。
見惚れてたみたいで恥ずかしいし
まさか勘違いはされてないよね?
テーブルも彼が汚れを綺麗に拭き取ってくれて
カフェオレ色になっていたテーブルが白に戻っている。
「お騒がせしました。
えっと…ーー」
「鮎沢 芹斗です。
初めまして、漣 緋奈星さん」
「え…どうしてわたしの名前を?」
「お父上から話、聞いてません?
キミに会うために来たんですけど…」
「父に…?」
なぜかわたしに会いに来たという彼は
ちょっと驚いたようで『おかしいな…』と首を傾げている。
こっちは父から何も聞かされていなかったけれど
でも今朝の『今晩、話がある』って言葉を思い出して、まさか…と察した。
「すみません。
アナタの事はまだ聞いていなくて…」
たぶん《《まだ》》で良いはず。
この人の事を何か言おうとしたんだと思うから。



