無彩色なキミに恋をして。


テキストの文書をブツブツと唱えて
覚える事ばかりに意識を集中させていたのがいけなかったんだと思う。
テーブルの上の資料に手を出したとき
すぐ近くに置いておいた飲みかけのカフェオレに
伸ばした肘が当たってしまい、カタン…と倒れた。

「うわぁぁぁぁぁ!」

発狂しながら慌ててテキストを退かしたけれど
近くに拭くものがなくてテーブルに零れ広がっていくのを食い止めることが出来ず、積み上げていた資料本にまで被害が拡大。

「どうしよどうしよッ!」

急いで避難させようとした挙句、ドサドサ…と床に落下させカフェオレも一緒に垂れる始末に、もうこの辺りは惨状。


はぁー…最悪…
勉強どころか仕事が増えただけじゃん…


途方に暮れながら散らばった本を拾い集めていて
近くに人が来た事に気が付かなかった。


「大丈夫ですか?」

「え…」

頭上から優しい声し顔を上げると
その人はテーブルの上を雑巾で拭いてくれていて。
それが例の噂の“スーツ姿の若いイケメン”。


あ、この人…


驚いて拾う手が止まり
その彼に目も留まる。

女性社員が言っていたみたいに、確かに容姿端麗。
二重瞼が格好良さと言うより可愛いようにも見えるし、年齢もわたしとさほど変わらないんじゃないかと思う。
背丈は燈冴くんよりかは少し低いのかな。