燈冴くんがそんな事を…?

知らなかった…―――


「…ッ」

元宮さんを前に涙ぐみそうになって
慌てて俯き唇を噛みしめた。

彼がそこまで覚悟していた事も
ずっとわたしを思ってくれていた事に気付こうとしなくて…
元宮さんと会った事に勝手に苛立って
自分の事ばかりで一方的な理由で
全然向き合おうとしなかった。

わたしは
どれだけ燈冴くんを傷つけて苦しめていたんだろう―――


「悔しいですけどね…
 あんな真っ直ぐ言われてしまうと
 入る隙なんてないなって思いました…し」

聞こえてくる元宮さんの声に
堪えきれない涙が溢れて顔を上げる事が出来なくて
彼女はその中でも言葉を紡ぐ。

「2人の絆を思い知らされました…」

今彼女がどんな顔で話をしてくれているのか
全く見る事が出来ないけれど
その声は少し、震えていた。

ーーーー
ーーー


目を赤くしたわたしと
今にも泣きそうな元宮さんは
お互いそれ以上多く言葉を交わす事が出来なくて
『さようなら』と握手をし、背を向けた。


元宮さんの言葉が後押しのようになったから
燈冴くんを想う気持ちが募っていく。

帰ったらすぐに燈冴くんに伝えよう。
『離れたくない』って、今度こそちゃんと言葉にしようって。



              【すれ違う心の距離。終】