そろそろこの制服も暑い
衣替え前の教室
窓の外から射す
六角形の太陽

お気楽な
同級生達は
流行りの音楽のような
メロディーでしゃべった

そういうやつらとは
違うチャートが
俺の毎日を支配していた
楽譜を吐いては捨てた

今日は5月22日だ
と言ったのは
誰だ
伏せた顔を上げた

あの瞬間から
365日と数日が
過ぎていた
両手で顔をふさいだ

失った
そう
酷く孤独な
自分を

あれさえなければ
良かった
まやかしのような
日々は要らなかった

今の自分が
本物だ と
言い聞かせた
春にあいつが

消えるよう
春にあいつを
想わなくていいよう願う
一対の手のひら

放課後
来いよと仙崎の顎が上がる
なすがままに教室を出る意志の無さ
に もう腹が立つ事もなくなった

願えば
この部屋も
この男も
この俺も

消えるだろうか
救いようのない譜面が
二対の手のひらの間 を
静かに抜けた