「サリーシャ、久しいな。息災に過ごしていたか? という言い方はこの状況では少々おかしいか。だが、さきほどに比べてだいぶ顔色がよくなって安心したぞ」
「先ほどはご心配をおかけしました。わたくしは元気にしていましたわ。フィル……フィリップ殿下もお変わりなくお元気そうで」
「フィルでよい。今は二人だ。──ところで、サリーシャと二人で話がしたいと言ったのは、そなたに聞きたいことがあったからだ」
「わたくしに、聞きたいこと?」

 サリーシャは少し首をかしげると、フィリップ殿下を見つめた。
 久しぶりに正面から見る友人は、相変わらず絵本の王子様が抜け出してきたかのように凛々しく精悍だ。金の髪は部屋の中でも眩く輝き、青い瞳は永遠に続く空のように、どこまでも澄んでいる。先ほどの乱闘のせいだろうか。よく見ると長い髪が少しだけほつれ、おでこにかかっていた。その一房の髪すら、フィリップ殿下の魅力を引き立たせている装飾ように見えた。

「サリーシャには、本当に礼を言っても言いきれぬ。エレナが無事だったのは、そなたのおかげだ」

 フィリップ殿下は少し顔を俯かせると、膝の上にのせていた手の指をぎゅっと握り込んだ。そして、その秀麗な顔の眉間をぐっと寄せる。