「見ろよ渡会、雨が止んできたぜ!」


 私の言葉を断ち切るように、先輩が大きな声で話ながら立ち上がった。


「そうですね……」


 中学生の時から大好きだった、憧れの先輩。

 同じ高校に通うことはできなかったけど、すぐ目の前に先輩はいる。

 こんなチャンス二度とないかもしれないから、勇気を出して告白の言葉を……


 わざとか、それとも偶然? 言葉を断ち切って私が話せなくなった。

 私の告白なんて聞きたくない? 関わりたくないって先輩は考えてるのかな……

 ネガティブ思考が頭の中をグルグルかけめぐる。


 口を閉じて私が黙り込んでる間に、雲の切れ間から日差しがでてきた。

 私のタオルを首に掛け、両手を腰に当てたまま仁王立ちの先輩。

 その後ろ姿を見ると、濡れて透けていたYシャツは乾いて地肌が見えなくなっていた。


「残念……」


「渡会、なにか言ったか?」


「べつに、何でもないです……」


「そうか」


 背中を向けたままの先輩が、顔を見せず首に掛けた私のタオルを手渡してくる。

 私が無言でタオルを受け取った後、少しの間お互いに口を噤む。

 先に口を開いた先輩が静かに言ってきた。



「俺、そろそろ行くぜ……」