「フローラルの香りがした……」


「えっ……」


 私は好んで、昔からリンスやトリートメントはフローラルの香りにしていた。

 先輩がつかったタオルも、私が濡れ髪の水分を拭き取ったから香りが染み込んだのだろう。

 それがどうして……


「渡会が走った後、フローラルのいい香りが漂っていた」


「それって、中学一年生の時ですよね!」


「このタオルから、同じ臭いがして気づいたんだ。中学のころを……」


 先輩の心の片隅に、私の存在が残ってたなんて嬉しすぎるよ。

 髪が短くて、日焼けした小麦色の肌だった陸上部の頃とは見た目が違う私。

 髪は腰まで長く、筋肉は落ちて細身のスタイルに変貌してしまった。


 短いスカートに着崩した制服、高校生になった今の姿をチラッと見ただけで分からないはず。

 当時の私と照らし合わせても、あまり共通点がないのに気づいてくれた。



「あの、先輩、私……」