「びしょ濡れも、ずぶ濡れもイャ~! せめて、しっとり濡れで勘弁してぇ~!」


 雨に濡れて変な気持ちの私は、さらに大きな声で叫んでしまう。


「神さま、どうせ濡れるなら! びしょ濡れじゃなく美女濡れにしてよ~!」


 ―― その瞬間!

 雷が落ちて、轟音が響きわたった!


「キャー! 雷神さま、ごめんなさ~い!」


 私はいったい、誰と話をしてるのだろう。

 こんな状況じゃ冷静になれないし、とりあえずバス停へ急ぐ。


「お天気お姉さんのウソつき! 雨降りって言わなかったよね!」


 文句を言いながら国道に出たけど、バス停は道路を挟んで反対側。

 すぐ横にある交差点へ急いで走っても、信号は赤。

 鞄を頭に乗せて傘の変わりにするけど、あまり雨は凌げてない。


「早く青に変わってよ……」


 体の動きを止めて立ってると、体が冷える。

 雨に濡れて体温を奪われてるせいか、中学生の時に怪我をした足首が痛む。

 足下からズキズキと響く痛みに、私は顔を歪める。

 ゆっくり走るのはいいけど、全力疾走は控えるようお医者さまに注意されていた。


 信号機を見つめる私に、容赦なく雨が打ち付けてくる……



 ―― その時



 私が乗る予定だったバスが、目の前を通り過ぎていった……