でもゆり菜ちゃんの表情は納得のいってないように見える。

そりゃそうだ。そのくらい自分で言えって感じだよね。

なんで日葵が言うのって思うよね。わたしだったら思うよ。それに種目もほとんど決まってくるまで何も言えずにいたわたしが一番悪い。


「じゃあ決め直すかなあ」


ゆり菜ちゃんが困ったようにつぶやくと、教室中が「えーっ」と怪訝な声に包まれた。

ソフト…自信ないけど、みんな困ってる。というか、わたしが悪い。なのに困らせてる。それが耐えられない。


「あ、の、ゆり菜ちゃん」


おずおずと手を上げる。声はあまり出なかった。だけど聞こえたみたいで、ゆり菜ちゃんは前下がりのボブを揺らしながら振り向いてくれた。


「茉幌?」


日葵が心配そうにこっちを見てる。
大丈夫だよ。ごめんね。


「ソフトで大丈夫…やります」


クラスのみんなも、ゆり菜ちゃんも、困らせたくなかった。だけど一番は、常盤くんがせっかく早く種目決めが終わるように何でもいいって言ったのに、それを台無しにしたくなかった。

ぱあっと表情を明るくして「本当!?じゃあ名前書くね!」と黒板に駆けていく後ろ姿を見て、そっと息を吐く。


やるからには、足を引っ張らないように練習しなきゃ…。

だけど本当に、ソフトは苦手。真っ直ぐ投げたつもりでもどこかにいっちゃうし、空振りばっかりだし、ボールを取るのはちょっとこわい。バスケやバレーボールと違って球が小さいから取りにくい。


それに、ソフトのメンバーを見ると話せる子が志保梨ちゃんしかいなかった。日葵はバスケだ。

帰り際に志保梨ちゃんが「がんばろう、ほろちゃん」と言ってくれたけど、うまく笑顔が返せなかった。