もう1度あの男性を探すことになってしまったが、探し出すまでにそう時間はかからないだろうと考えていた。


なんせ相手の会社はすでに知っているのだ。


今回も前回と同じようにしてドーナツ屋で彼が出てくるのを待てばいい。


「アリス、楽しい?」


目の前でコーヒーを飲んでいるカイが質問してくる。


「うん。楽しいよ」


返事をしながらもアリスの視線はカイよりも窓の外の会社へ向けられていた。


まだ終了時間には早くて誰も出てくる気配はない。


「これを食べたら映画でも見に行かないか? とてもおもしろい映画を上映しているみたいなんだ」


「ごめん。映画って気分じゃないんだ」


のんびり映画なんて見ていて、男性を見逃してしまっては意味がない。


ここから動くのは、彼を見つけたときだけだ。


しかし、会社が終わる5時を過ぎてたくさんの社員たちが表へ出てきても、彼の姿は見えなかった。


ドーナツ屋を出て近くで様子を伺ってみても、やっぱりいない。


もしかしたら今日は残業でもしているんだろうか。


だとすると何時に戻ってくるかわからない。