聞かれてアリスは口ごもる。


キユナを見下すことができたのはついさっきの出来事だ。


それによってすごく気分にもなれた。


それは、このクローンがいなければ不可能なことだったのだ。


「それにしてもこれは詐欺でしょう? 私はなにも知らされてなかったんだから!」


「やめてよ詐欺だなんて。確かに説明は忘れていたけれど、お金は1円ももらってないのよ?」


女性の言葉にアリスは黙り込んでしまった。


ただ鋭い視線で睨みつけることしかできない。


確かに彼女の言う通りアリスはこのお店で1円も支払いをしていないのだ。


説明を忘れていたとしてもそれが詐欺になるかどうか、怪しいところだった。


「ちなみにだけど、存在できる機嫌はクローンによってマチマチなの。この子が6日しかもたないと思っているみたいだけれど、もっともっと寿命の短いクローンだっているのよ」


「……彼氏が6日でいなくなると怪しまれるに決まってる」


「別れたことにすれば?」


アリスは下唇を噛み締めた。


キユナとケンタの顔を思い出すと、すぐに別れたと言うのも癪に障る。


どうにかしてカイとの関係が続いているように見せかけたい。


「もう1度同じクローンを作ることはできる?」


聞くと、女性は頷いた。