「実在する人間のクローンだから、生活パターンはすでにインプットされているのよ。でも安心して、実際に彼が会社に行ったりするわけじゃないの。その時間帯には仕事に行っているように錯覚するだけ」


「じゃあ、クローンはその時間になにをしているんですか?」


「あなたが呼び出せばそれに答えて、待ち合わせをすることができる」


「クローンは家には戻るんですか?」


「クローンに家はない。夜は充電するために人間と同じように眠るのよ。あなたの隣でね」


それを聞いて安心した。


夜は一緒にいるし、昼間も呼び出せば来てくれるみたいだ。


「ただ少し例外もあるから、覚えておいて」


「なんですか?」


「進化したクローン技術で、飼い主の指示に従わないときがある。待ち合わせをしても、戻っておいでと連絡しても、無視をするようになるの」


「そのときはどうすればいいんですか?」


「無理に連れ戻したりしないこと。クローンはクローンの考えがあって行動しているから、それが終われば自然に戻ってくる」


アリスは頷いた。


なんだか少し難しい話しだったけれど、人間とほとんど変わらない意思を持っていると思っていれば間違いないみたいだ。


アリスは言われたとおりカイのスマホに自分の番号を登録して、スマホをもたせた。


これが唯一カイと自分を結ぶものになる。