理想的な男性の髪の毛を手に入れたアリスはその足で学校裏にある廃墟へ向かった。


悪いことをしてしまったという罪悪感と嬉しさがないまぜになっていて、今は誰とも会いたくない気持ちだったのだ。


今誰かに会えば心の内側をすべて見透かされてしまう。


そんな気分だった。


ここなら誰も来ないからそんな心配はない。


アリスは廃墟に残されているソファに座り、彼の髪の毛を見つめた。


たった一本の髪の毛。


息を吹きかければすぐに飛んでいってしまうそれを大切に大切にハンカチに包み込む。


これでサンプルは手に入った。


次は手作り人間工房がどこにあるか見つけるだけでいい。


そう思うと大きな仕事をひとつ終えた気になって、アリスはソファに横になった。


誰も使っていないソファは埃っぽかったけれど、気にならなかった。


目を閉じると急速に眠気が押し寄せてきて、そのまま夢の中へ引き込まれて行ったのだった。