短編『ラブミー、秋津くん』



 驚いて目を瞑ると、今度は唇を奪われる。



 唇がゆっくりと離れ、目を開けると、そこには私の頬に手を当てて目を細めている秋津くんがいた。


 その瞳が映す群青に吸い込まれそうになる。


「へ、部屋に戻ろう!」

 急に恥ずかしくなり、秋津くんを促すと、彼はくすくすと笑った。


「お邪魔します。常盤さ……いや、佳煉(かれん)ちゃんか」


 秋津くんが妖しげな笑みを浮かべながら、私の手を引く。

 彼に名前を呼ばれると、自分の名前が特別良いもののように思えた。


 彼に手を引かれながら思う。

 私は、今日も彼の声を聞きながら甘い夢に溺れていくのだろう。


 そんな予感を抱きつつ、その群青の世界へ勢いよく飛び込んだ。



(完)