しかし律貴を勘違いさせたらしく、不機嫌そうな声が聞こえてくる。
「そんなに俺が嫌?」
「違っ……!」
咄嗟に否定しようとして彼のほうを振り向いた私は、視線がぶつかっただけで胸がぎゅっと苦しくなり、目を泳がせる。
「……慣れてないから、恥ずかしいだけ」
まつ毛を伏せてぽつりと呟いた。温泉の力も相まって身体が熱くて仕方ない。
膝を抱えて小さくなっていると、お湯が揺れる音と共に彼が動く気配がした。あっという間にこちらに来た彼は、私をぐいっと抱き寄せる。
「じゃあ慣らしてあげる。あの夜みたいに」
情欲が滲むセクシーな笑みが視界一杯に映った直後、熱く濡れた唇が私のそれに重ねられた。
「んっ……ふ、ぅ」
口づけが鍵となって記憶の引き出しを開けたかのごとく、抱き合った夜の情景が鮮明に蘇る。
あのとき最初にされたキスは、すごく優しかったっけ。挿入する前の前戯という形式的なものじゃなく、私の苦手意識を少しずつ取っ払うような、ある種の愛情を感じるものだった。
今、初っ端からお見舞いされているのは、官能が刺激される濃密なキス。お湯の音なのか、舌が絡む音なのか、わからないほどぐちゃぐちゃにされている。



