やっぱり、あの子が彼の想い人なんだろうか。疑惑が確信に変わりつつあり、ショックを受けて動けなくなる。
しかし、電話はそのあとすぐに終了したらしく静かになった。いつまでもお手洗いから出ないのもおかしいので、一度深呼吸し、なんとか平静を保ってドアを開ける。
律貴は相変わらずポーカーフェイスで、女性と電話していたことすら感じさせない。私に微笑みかけ、「風呂、どうぞ。先に入って」と促した。
とにかく気まずいので、お言葉に甘えて逃げるように脱衣所に向かう。服を脱いで長い髪を適当にお団子にまとめ、格子状の引き戸を開けると、露店風呂の向こうに相模湾を一望できる最高のロケーションが広がっていた。
一瞬現実を忘れるくらい景色に感動し、檜の浴槽にゆっくりと浸かる。とっても気持ちよくて、身体と共に強張った心もいくらか解れた。
月明かりに照らされた静かな海を眺めながら、丸みを帯びてきたお腹に手を当てて深く息を吐き出す。
子供を授かればそれでよかったはずなのに、どんどん欲張りになっていく。でも、こんなふうに相手の心まで欲しがっているのは私だけなんだろうな。



