美しいイルミネーションに囲まれる非現実的な感覚を味わい、律貴と至近距離で話しながら歩くのは夢見心地で、満足してホテルに戻ってきた。一旦お手洗いに行き、本日最後のお楽しみである露天風呂に入る。
このホテルには全室に露天風呂が備えつけられており、絶景も眺められて最高なのだ。
わくわくしつつお手洗いを出ようとしたとき、部屋のほうから律貴が誰かと話している声が聞こえてきた。おそらく電話だろう。
「気にしないで、朝美」
律貴の口から出た名前が耳に入ってきて、心臓がドクンと重い音を立てる。
うそ……相手はアサミさん? 律貴の番号まで知っているの? 彼女の存在はせっかく忘れられていたのに、よりにもよってこの旅行中に思い出すハメになるとは。
急激に胸がざわめいて、聞きたくもないのに耳をそばだててしまう。
「僕がいいんでしょう? その日なら会えるよ。……ああ、待ってる」
甘さを含んでいるように感じる彼の言葉が脳内をぐるぐる巡り、私は呆然とした。
今のはまさか、逢引の約束……!? 頼朝と八重姫のように親密になれるのは、律貴と私じゃなくてアサミさんってオチ!?



