「より子さん、大丈夫ですか?」
柚ちゃんに心配そうに顔を覗き込まれてはっとする。
いけない、悪いほうにばかり想像していた。自分の目で実際に見たわけでもないのに、勝手に決めつけて不安になるのは愚かだ。冷静に考えないと。
「すみません、なにも気を遣わずペラペラと……」
「いいのよ、大丈夫。きっと昔の知り合いかなにかでしょう。あの人が院内で浮気するわけないし」
バツが悪そうにする柚ちゃんに、私は軽く笑い飛ばした。彼女の表情もみるみる明るくなっていく。
「ですよね! なにより栄先生はより子さんひと筋だから、心配いらないですね」
無邪気に言われ、そういえば周りは律貴が一途な旦那様だと思っているんだよな……と曖昧な笑みを返した。なれそめや夫婦関係について聞かれたときは、あの王子様スマイルを振りまいて適当に答えているみたいだから。
ただ、私が彼の妻であるのは確かだし、それが一番の安心材料になるだろう。
思考を前向きに変え、ざわつく胸をなんとか宥める。アサミさんの存在についてはあまり気にしないようにしよう。
来週には律貴と約束していた通り、一泊のデートをする予定だ。余計な心配をしていたら、ふたりで過ごす貴重な時間が存分に楽しめなくなってしまう。
頭の中で勝手に作り出していたアサミさんの姿をぱぱっと消し、気持ちを切り替えて読み聞かせの準備を再開した。



