「なに?」
「栄先生のことで」
小声で口にされた名前にギョッとして、まさかと目を見開く。
「医療ミスでもやらかした!?」
「そこまで物騒な話じゃないです」
間髪入れず冷静に返され、一旦胸を撫で下ろした。医者妻の友達からたまにシャレにならない話も聞くから、ちょっと心配してしまった……。
ところが柚ちゃんは、「けど、より子さんはちょっと気に留めておいたほうがいいかも」と真剣に言うので、誰もカウンターには来ないのを確認してからしっかり耳を傾ける。
「ついこの間、院内で栄先生に妙に馴れ馴れしく接してる若い女の子がいたらしいですよ。先生のこと『りっくん』って呼んでたって」
「りっ……」
りっくん!? そんなふうに呼ぶ若い女の子だなんて、確かに聞き捨てならない。
私は表情を険しくしてさらに柚ちゃんにくっつき、詳しい情報を促す。
「どんな子?」
「たぶん二十代の、明るくてすごく綺麗な子だったみたいです。見たことがないって言ってたから、医療関係者ではなさそうですよ。誰かのお見舞いに来てたのかも。名前は確か……」



