私は戸惑いを露わにして口を開く。
「でも、私じゃなくてもいいじゃないですか。栄先生ならお嫁さん候補がたくさん……って、好きな人はどうするの!?」
大事なことを思い出し、若干前のめりになって問い質した。
彼は目をしばたたかせたあと、ふっと嘲笑を漏らす。
「ああ、あまり思い出させないでほしいな。俺にとってはフラれたようなものだから」
「えっ!? あ……すみません」
驚くと同時に、無神経なことを言って申し訳なくなった。まさかこの王子様がフラれるとは思わなかったから。
なのに、どこかほっとしている自分もいる。この矛盾している感情はなんだろう。
まつ毛を伏せて思案する私に、容赦のない声が降ってくる。
「俺を逃したら、あなたは一生結婚できないと思うよ」
「うっ」
すっごい失礼だけど、その通りかもしれない。それに、栄先生とならわりと上手く一緒に生活していける気がする。
気を遣わずに話せるし、同じ病院に勤めているからお互いの仕事に理解もあるし。
私の意思を尊重しようとしてくれるだけじゃなく、一緒に暮らしていけると思える人はそうそう現れないと痛感している。



