──それからどれくらい経ったのか、気がついたときには車に乗っているような揺れに身を任せていた。
その間「気持ち悪くない?」とか「寒くない?」とか、気遣う優しい声がかけられていて、とても心地がよかった。
ふと、また違う揺れを感じて重い瞼を開けると、なぜかシャープな顎のラインが視界に入る。喉仏もセクシー……なんて呑気に思っていた私は、ありえない状況に気づいて一気に覚醒する。
「あれっ!?」
「お目覚めですか。末永さんの家わからなかったんで、とりあえずウチに連れてきました」
私を見下ろしてさらりと告げる栄先生。自分がお姫様抱っこされていると認識して、驚きで叫びそうになった。
周りを見やると、ウチと言いながらホテルに連れ込もうとしているのでは?と疑いたくなるほど高級感のあるホールにいる。フロントがあるので、今マンション内に入ったばかりなのだろう。
慌てて彼の腕から下りようと、磨き上げられた大理石調の床につま先をつける。
「すっ、すみません! 私、帰りま──わっ」
立とうとした瞬間、思いのほか足に力が入らなくてふらつき、転びそうになる身体を彼が咄嗟に支えた。そして、厳しい視線で私を捉える。



