目をしばたたかせる私に、彼は心底呆れた調子で言う。
「そいつが下手だっただけだよ。末永さんのせいじゃない」
「そ、そう……なの?」
ずっと自分がいけないんだと思っていたけれど、相手に問題があったの? だとしたら、私の悩みはとんでもなく無駄だったことになる。
でも、本当に私が不感症なのかもしれないし……と思考を巡らせていると、栄先生もカウンターに肘をつき、間近で私の瞳を覗き込んでくる。その顔に、色気の漂う笑みを浮かべて。
「俺と試してみればわかる」
暗示をかけられるみたいに囁かれ、心臓がどっくんと飛び跳ねた。
この人に抱かれる妄想が、一瞬脳裏をよぎってしまった。急に〝俺〟になっているし、また新たな一面がかいま見えて胸が激しくざわめく。
「な……な、なに言ってんですか、もう!」
「ぅぐ」
どうにもいたたまれなくなり、私はおしぼりを彼の頬に押し当てて顔を離す。妙なムードが壊れ、おかしそうに笑う栄先生を横目に日本酒を手酌して飲み干した。
顔が、身体が熱い。これは酔っているせいじゃない。私の女心が、久々に反応しているせいだ。
この人が言ったのはたたの冗談で、本気じゃないことくらいわかっているのに。



