「私、いつ心筋梗塞を起こしてもおかしくないんです。もしそうなったとき、治療しても予後が悪かったら一年以内に死ぬ可能性が高いんですって」
淡々と語られる内容は、その口調とは違いとても深刻で、私は言葉を失う。まるで心臓に爆弾を抱えているような状態ではないか。
「そうならないために明日手術するんだけど、どうしても頭によぎるんですよ、〝死〟が」
彼女の口元にはうっすら笑みが浮かんでいるものの、恐怖や葛藤が見え隠れしている気がして胸が苦しくなる。
「そんなに重い病気だったなんて……」
律貴とのことばかり気にして、病気が深刻な状態だと想像できなかった。
罪悪感を覚えてまつ毛を伏せる私に、朝美さんは少し声のトーンを明るくして突拍子もないことを言う。
「実は私、処女なんです。二十六歳にもなって笑えるでしょう」
これまた予想外のカミングアウトをされ、私は目を丸くする。
「なんとなくそういう行為が苦手で、いつの間にか恋愛も避けるようになっていたんです。でも命の危険を知ってから、〝ああ、私は愛される感覚も知らずに死ぬかもしれないのか〟って急に虚しくなって、誰かと触れ合ったり、恋愛する気分を味わいたくなった」



