「そしたら"是非とも来てくれ"と言ってくれてね。
お金の方は綾子さんともう払っといたから」
思わず母を見る。
母はにっこり笑って私の両手を握ってきた。
「遥華のその才能は埋もれさせるには勿体ない。
今までずっと我慢してきたんでしょ?
お母さんが気付かなくてごめんなさい。でも、これからは好きに生きていいのよ」
ここに来る前の兄たちの対応を見て、きっと悟ったのだろう。
"私の好きに生きてもいい"
本当に良いのだろうか。
ずっと不安だった。
あの家を出る前、私の人生を歩むと決めた。
でもどこか心の中にうまく言えない不安があった。
本当に良いのか…誰かに迷惑が掛かるのではないか…
好きに生きるとは何なのか…
今までずっと命令されて生きてきた。
自分の時間なんて全然取れなかった。
次何しようかなんて考えることもなかったのだ。
だからこそだろうか。
いざ自分の好きなことをしようと思うと分からないのだ。
何から始めれば良いのだろう…
そればかり考えてしまっていた。
