カズ君が高校1年、私が中学2年に進級すると当然環境がガラリと変わる。
中等部と高等部では校舎が違い、プラス カズ君の人気が私の前に
立ちはだかってしまう。
イヤでも気づく女の子の影。
柚菜を好きなくせに他の女子とデートしている姿を何度も見かけた。
その度に自分は何の意味も持たない存在なんだと認識させられ、
柚菜じゃないなら私でも良いじゃない!何度も口にしそうになった。

でも、その言葉さえ呑み込んだのは幼馴染というポジションに
縋りつきたかったから。

青春を謳歌しているカズ君を尻目に私の心はドンドン荒んでいったが、
柚菜が桜華の中等部に進学すると聞いた時には光明がさしたと思った。
私に天が味方している。
柚菜の居ない学園生活でどんな手段を使ってもカズ君の隣を確保すると
誓った。

私が高1、カズ君が高3の夏に自分の人生が180度変わってしまった。
正確には自分の愚かな行動で悪い方に変化してしまう。

どんなに頑張っても振り向いてくれないカズ君、同じ校舎になったから
顔を出しているとカズ君の親友に冷たい視線を浴びる事が増え、
カズ君の居ない時に

「学年を跨いで迄来る大事な用事なんて無いでしょ!」と言われてから
教室に行けなくなってしまった。

私の行動は男女共に不快感を与えていたのか、教室に居る誰からも
同情の声は上がらず、寧ろよくやった感の空気が流れていた。
そんな空気の場所から逃げる様に1年のフロアーに戻り、次の授業は
トイレで過ごし、悔しくて情けなくて恥ずかしくて
涙で溺れるかと思う程泣いた。

カズ君が柚菜に向ける瞳を私に向けていたら彼の友人からは
辛辣な言葉は出なかっただろう
カズ君が柚菜に向ける優しさが言葉が私に向けられていたら
受け入れてくれるのだと言うのは解る、だからこそプライドはズタズタに
なり、意地でも”彼女”というポジションにつきたかったが
この出来事で私は幼馴染以上の何にでも無いのだとカズ君の周りの認識に
絶望し、良からぬ方向に自分の思考が向いてしまった。