『あ、あの!』

私はすぐに声を掛けていた

『助けていただいてありがとうございます!』

私は深く頭を下げた。

『いえ。私は当然のことをしたまでなので頭を上げてください。』

今の私にはこの優しさが心にしみた。

私はまた少し目に涙をためてしまう。

『っ!怖かったですよね…。すみません…俺がもう少し早く来ていれば…』

違う…違うんです。貴方の優しさが嬉しかったんです。

両親からの愛も優しさもなかった私に貴方は今、本当の優しさをくれるから。

『…す…き…』

私は気づけば気持ちを口にしていた。

貴方が私にくれたものを返したい。私にも貴方に何かさせて欲しい。

そんな気持ちの一心で私は彼に想いを告げた。

『…初めまして。俺の名前は八坂 瑠斗です。一応八坂財閥の御曹司です。』

彼は私に自己紹介をしてくれた。

『あ…えっ…と…私は白鷺 季春です。白鷺財閥の令嬢…です。』

『白鷺さん。』

瑠斗さんは私の手を握って言った。

『俺たちはまだ会って間もないしお互いのことを全然知りません。』

あぁ。フラれるのかな…。

私は彼の前置きに悲しくなった。

『だから……まず交流から始めませんか?』


『……え?』

きっとその時の私の顔は嬉しくて泣きそうになっていたと思う。

『つまりはお互いに婚約者候補ってことです。これから少しずつ…ね。こここら始めましょう。』

私は彼に受け入れられて貰えた気がして嬉しかった。

私はこれからは父と母のためじゃない。私と瑠斗さんのために生きていこう。

そう誓った。