ふいに、ガチャっと玄関の開く音が聞こえて、奈々は急いでリビングの扉を開けた。

「おかえりなさい!」

リビングからひょこっと顔を出した奈々に、祐吾は目を細める。

帰る場所がありそこには愛しい人が待っている。
それだけで胸がいっぱいになった。

「ただいま、奈々」

祐吾が腕を広げると、奈々は何の躊躇いもなく満面の笑みで飛び込む。

ずっと求めていた。
触れられる喜び。
手の届く幸せ。

お互いの存在を確かめるように、抱きしめる腕に力がこもる。

「奈々」

「祐吾さん」

名前を呼べば呼び返してくる。
ただそれだけのことなのに、何にも代えがたい愛しいことのように思えた。

心地よい暖かさのリビングへ入ると、美味しそうな香りが漂っている。

「祐吾さんの好きな金平ごぼう、作ったの」

祐吾の手を引っ張ってダイニングへ行こうとする奈々を、祐吾はぐいっと引き寄せる。頬を柔らかく包んで熱い口付けをすると、そのまま奈々をソファに押し倒した。

「……祐吾さん?」

驚いた顔をした奈々の頬を撫で、今度は触れるだけのキスをする。
そっと唇を離すと、囁くように、いやまるで吐息が漏れるかのように言葉が紡がれる。

「奈々、今すぐお前がほしい」

低くて蕩けるようなその声は奈々の体を疼かせる。祐吾の甘いささやきに奈々は少しだけ頬をピンクに染めながらコクンと頷いた。

奈々は祐吾の首に手を回して自分の方に引寄せる。

何度も何度もキスをして。
手を絡め合って。
触れて触れられて。

それはまるで会えなかった時間を埋めるかのようにお互いを求めあい、そして大切に大切に、深く甘く愛し合った。