思い出せない約束

「直樹、それ、まさか、5年前の!?」

私は、半信半疑で尋ねる。

「お、ようやく思い出した? 今日からよろしくな、俺の奥さん」

笑顔でそう言った直樹は、ぽんぽんと私の頭を軽く撫でる。

えぇー!?

偽造でも何でもなく、2人の直筆の婚姻届。

撤回はできないよね!?

呆然と立ち尽くす私に、直樹が言った。

「じゃ、帰ろ。新居に」

えっ?
新居!?

「新居って何!?」

私は、尋ねる。

「今日から2人で住むために、新居、借りたんだ、先週」

は!?

意味分かんない!

でも……

そう言って、25年ぶりに直樹に握られた手は、なんだかあたたかくて……

つい、促されるまま車へと向かった。



─── Fin. ───


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