「乗れ」
「……っ、ちょ」
校門前に停められていた黒い車の後部座席に押し込まれ、扉を閉められる。
ウソでしょ!?
「なにす……」
「出せ」
いやいや。
「はい」
いやいやいや。
はい、じゃなくて。
なに了解しちゃってるんですか。
待ってください運転手さん。
一方的すぎる……!
車が出発してしまった。
その数秒後、ふいに
「急いでいたな」
となでアイツがつぶやく。
……なにか、言った?
「どうしてだ」
「……え?」
「急いでいた理由を言え」
いや、急いでた……っていうか。
赤星くんから逃げたくて。
それにはやくカフェに予約入れたいし。
食事券の期限が切れないうちに。


