今夜もあなたと月、見ます。



「あっ!道枝さん!…と彼女さん!?」

と、慣れない低い声が背後から聞こえた

何事じゃと振り向くと、私たちより年上であろう髭の生えたピアスバチバチの男がこちらを見ていた


「おー」

響紀さんが興味なさそうな返事をする

さっきまでの笑顔が嘘のようなだるそうな顔

アレが…自分だけに向けられた笑顔だと思うと

単純だと分かっていながらものすごく気分が良くなる

それと同時に…少し、熱くなった気がした


「お戻りだったんすね、さっき檜山さんが探してました」

「あー何の用って言ってた?」

「一週間前の風組の…」

風組って言った!

「あー…だるい。パスで」

「えぇっ」

え、いいの?

わっ!

ぽかんと響紀さんを見上げた瞬間、ぐんっと腕を引かれる


「今そんなことより重要な用があるから」



さっきより低く、少しこそばゆい声でそう呟いて私を見る

私と、何故か髭のピアス男もボンっと赤くなる


「しっ失礼しました!おおお楽しみください」



お楽しみ…て?


…はぁ!?

ちょっ!何勘違いしてんの!?