今夜もあなたと月、見ます。



細い道

体を少し横向きにして進む

月明かりが微妙に差し込む細い道

足元を小さな虫が飛んでいる

キモい


月明かりが強くなる

かかっていた雲が晴れたのかな

月の灯が真っ直ぐに地上に落ちてきたのと同時に

私はその細い道を出た

窮屈さが一気になくなって開放される

建物に囲まれている割には風通しのいいこの場所


そこには、誰もいなかった

思ったより残念に感じている自分に目を背けて、その空間の真ん中に立つ


「あー…たしかに綺麗かもしれない」

ボソリとそんなことを呟いた

月とか星とか特に興味なかったし

まあたまに見かけた時に、でかいなーとか光ってんなーとかは思うことはあったけど

なにかしらの感情を持つことはなかった


いつ誰とどこで見ようが月は月だ

それ以上のなにものでもない

そんな私が月を見るためだけに、こんなめんどくさいところまで来るはずがない


あーあ

認めてしまうと女々しくて何だか嫌になる


会いたかったんだろう

きっと

道枝響紀という男に

もう一度