今夜もあなたと月、見ます。



夜風が思ったよりも気持ちよくて

癖になりそうな感覚だった


夜の街を静かにバイクが進んでいく、聞こえるエンジン音は最低限の音で

やっぱりこの人は暴走族じゃないんだって勝手に思う

私がそう思いたいだけかもしれないけれど



…どこ行くんだろう


見慣れない道に入って行く

人通りが減っていき、街頭や街の明かりも無くなって行く


「ん、着いた」

…ほお


バイクを止めた場所は、ちょっとだけ高いビルの前

一見普通の建物に見えるけど…

用事ってなんだろう


「ちょっとだけ着いてきて」

「あ、はい」

「…離れちゃダメだよ」



「はい」


カフェオレの彼の背中について歩く


白の大きめのシャツに黒のスキニーを履いただけのシンプルな格好

彼がどんなことをしている人なのかは外見だけでは判断できない

モデルさんとかかな…


なんて呑気に考えながら、ビルの中を歩く


中も普通の作りで、どっかの会社なのかな?って感じの作業スペースがあったりする

大学一年生の世代とは言ってたけど…何やってる人なんだろう


学生さんなのかな?

でもこのビルに用事ってことは、お仕事なさってるのかな?


「乗って」

あ、はい

エレベーターに乗って3階のボタンを押す


体に重力を感じる