……え
「バイク?」
路地を抜けて案内された場所にあったのはバイクだった
「ん?」
「あ、いえ」
「バイクなら二人乗り大丈夫だよ」
そ、それはわかってますよ
でもそうじゃなくて…
やっぱりこの人は
瀧本先輩のいう、道枝という暴走族の総長とやらなの?
勝手に関連づけてしまう…けど
バイクくらい誰でも乗るよね
「バイク怖い?」
「あ、いえ全然大丈夫ですけど…免許持ってるんですか?」
見る限りかなり若く見える
下手したら同い年くらいにも見える
「あはは、さすが真面目ちゃん」
真面目ちゃん?
「持ってるよ。俺今19だから普通免許持てるの」
19ってことは
「2個上…」
「お、店員さん17歳?」
「はい高校三年生です」
「へえじゃあ二個下か。俺は一昨年高校卒業した世代」
そんなに変わらないんだ
「あ、そうだ。ちょっと先に寄りたいところあるんだけどいい?すぐに終わるし、こっから近いから」
?
「はい」
「ありがと」
促されて、慣れないバイクに跨ってみる
「しっかり捕まっててね店員さん」
ぎこちなく彼の服に捕まれば
「そうじゃないでしょ」
と、私の手を自分の腰に回す
「離しちゃダメ」
「は、はい」
密着した状態で、勝手に早くなる鼓動を落ち着かせる
バイクなんて初めてだ
しかも男の人に乗せてもらうなんて
彼からは少し、冷たいミントの香りがした気がした


