今夜もあなたと月、見ます。



「お疲れ様でしたー」

9時になり、バイト終了

「お疲れ様!気をつけてね」

「はーい」


あ、今日は月が細い

三日月かな

勝手に三日月からあのキーホルダーを連想し、響紀さんまでたどり着く

…あれから会ってない

会いたい


私の想い人らしい

自覚するとより一層女々しくなる上に自分をひたすら愚かだと思う

住む世界の違う人にこんな感情を抱いて、本当に私はどうしようもない人間だ


でもなんか…思ったよりも納得がいく

あの人を好きになるだろうと、きっとずいぶん前から分かってたんだ


まあいい、帰ろ

とぼとぼと帰路へ足が向かった時だった


「晴」

…え?

おそらく呼ばれた自分の名前にゆっくり振り向く

「よ」

…え?

「…響紀さん…?」


聞き覚えのある低音の声

そして、風に乗って香るミントの匂い

弱い月明かりの中でバイクにもたれかかってこっちを見ていたのは

響紀さんだった


まじか、このタイミングでか

なんという奇跡…

え、ちょっと心の準備何もできてないんだけど

もうちょっとしんみりする時間あっても良くない?


「お疲れ」

「なんで…?」

「たまたま近くにいたから」

「…そう、ですか」

「会いに来たらダメだった?」


…いや

むしろ


「いえ、ウェルカムです」

「ふふ、それは良かった」