そんな謎めいた会話を残して、横井くんと別れる
どういうことなのだろうか
なんだか悩み事でもあるような、そんな感じだったけど
横井くんから話そうとしない限り、こっちから詮索するのはやめた方がよさそうだね
間宮晴、そこらへんの配慮ができる良い女
自分で言うのもなんだけど、私結構うまく生きてると思う
平凡で、特に起伏のない、なだらかな人生
これまでもこれからも平凡を貫く
それが自分の理想の人生プランだと、そう思っていたけれど…
チャリ
キーケースに居心地悪そうに入っている、響紀さんからもらった屋上の鍵を見る
小さくて、それでいて主張の強い、白い三日月のキーホルダー
この人との出会いは
私の平凡を極めるはずの人生プランを大きく害することになってしまうに違いない
だけど、不思議と
構わないと思える
この気持ちがなんと言うのか知らないけど
ただ、少し前の私より変わったことと言えば
月が好きになったことだろうか


