「でもムカつく!喧嘩するならそいつらだけでしてればいいものを!人を巻き込んで、怪我までさせるなんて…それがサナだからもっとイラつく…!」


彼女を優しく撫でる、

ムキになって私のために腹を立ててくれる彼女に癒させる

少しの間話し込んでいるともう夕方になり

朱里が荷物を持ってきてくれていて、スマホのメールの着信が来ていて確認すると

父親から本家にすぐに帰ってくるように連絡が入っていた

そのまま朱里と別れて車に乗り込むと烏が本家の方に車を進める

今回はなんだろうか…

いつも同席していて何も誰とも話さないけれど

父親本人から本家に来るように言われたのはこれがあの事件以来初めてだ

本家に着くなり、キビつい顔をした男たちが頭を下げる「お嬢お帰りなさいませ」

その言葉に何も返さず無視する

どれも父親の言いなり、役に立つものなんて居ない

本家に着くなり使用人たちにお風呂に入れられ綺麗にされると綺麗な淡い紫のが置いてあり着せられる

髪の毛はハーフアップにされ、リボンでくくられると、化粧を直させられる

もしかして…

本家の父親の部屋に行くと「行くぞ」とだけ言われ本家を出て車に乗ると高級ホテルの一室に通された

弟と母親は先に行っていると使用人から報告があった

手の傷のことは誰も何も言わない

心配もしない…これがこの家の普通だ

そんな時兄だけがいつも心配して私を助けてくれたがそんな兄はもうこの世には居ない

車での中では無言が続く

少しして目的地に着くと部屋まで誘導されエレベーターに乗り込むと46階のボタンをポーター
がボタンを押すと父親がタバコを吸い始めた


エレベーターの中は禁煙なのは常識なのに

「すみません…お客様 禁煙ですのでタバコはお控えください」

このポーターはこのホテルがうちの父親のホテルのだと知らないのだろうか…


父親は眉間に皺を寄せタバコをポーターの腕に擦り付ける

私に止める資格なんてない…

でも…『お父様…若くてアルバイトの子なので、今回は…』

もっと怒らせたみたいだ

「お前に指図を受けるとな、いいご身分だ…まぁいい…」

そういい父親はニャと口角を引きあげ微笑む

ポーターはビクビクして一切動かない

エレベーターが着くと父親が降り

ポーターが汗だくでいるのでハンカチを取り出し手に渡すと耳元に近づき『早く治療してきなさい』と囁く

彼はその場に崩れると近くにいたホテルマンに支えられてどこかへ行った

私には何も出来ない…これぐらいしか
何も出来ない自分にうんざりする…

部屋に着き

ドアが部屋の付き人に空けられると中にいる人から目が離せなくなる


なんでここにアイツが…目が合い

あの赤い瞳から目が離せない…


「挨拶しなさい、さな」

その母親の言葉ににうんざりする

『こんばんわ、港さなと申します』

父親は頭を下げ挨拶をする

私もそれに続け挨拶をする

「やぁ…サナさん久しぶりだね、こんなに綺麗に成長して」


黒瀬 紺

真っ赤な瞳に金色の髪

おじさんだけど顔は綺麗に整っていている
片腕はない
威圧感がすごくて目を逸らせなかった


世界の裏社会の黒瀬財閥の組長であり、表向きでは黒瀬財閥の社長だ

気持ちが悪い…


『恐れ多いお言葉です』

「さぁ座りなさい」

席に着くと母と弟の間に座らせられ、目の前にはアイツとその姉その両親

ふたつの家族が揃った

兄を殺したこの家族のことを両親は全く恨んでいない

ゴミだと思っていたのだから…

死体が届けられた日にこの両親そして弟は死んだ兄を蹴り飛ばし役立たずと罵って捨てた

絶対に許さない…

そして兄の恋人だったのがアイツの姉の黒瀬 栞さんだ

赤い瞳に金髪のサラサラの髪人形のように綺麗な彼女にみんな虜になる


そして女神のような笑顔で男を突き落とす

あぁ…ギリ 歯ぎしりが止まらなくなるのを抑えて誰とも目を合わせ料理には触れない

両親達は性悪同士仲が良さそうだ

「サナさん。料理は口に合わないかね?」

その言葉に目を向け『ダイエット中なので…』という

元々食べないから嘘ではないが

口に合わないと言えばこのシェフは一瞬で路頭に迷う事になるだろう


その時、栞さんと目が会い微笑むと、嬉しそうに微笑む彼女がムカついてたまらない

「私もダイエットしようかしら…」

その彼女の言葉を弟が遮る

「栞さんは痩せる必要なんてないですよ。充分お綺麗なので…」

弟がポーカーフェイスで微笑むことなく、自然に微笑んでいる

「まぁ!お世辞がお上手なこと」

「いいえ本当のことですから」

弟に目を向けると少し耳が赤いように感じる

昔から弟は栞さんに思いを寄せているが、相手にはされていないみたい

理解できない

この女のどこがいいのか…

兄の死因は深く分かっていない…

でも知ったら殺される…それでも知りたくて

情報を探ったけど…真実は闇の中だ

「本題なのだが…サナさんと要の婚約は決定だな…澪が高校3年だから来年にでもサナさんは学校を辞めて直ぐに嫁いでもらおうか」

その言葉に息が詰まる

あぁそういう事か…理解した

いつか父親に家同士の駒として使われるだろうと分かってはいたけれど…

「サナさんうちの息子は無愛想だかこれでも文武両道で若頭でもあり、顔も悪くない」

「組長の息子さんに嫁げるなんてうちからしたら光栄ですよ。望んでいる方々は星の数ほどいるでしょうから」

両親たちの高笑いが響く


「サナさん、息子と違う部屋で少し会話をしたらどうかね?あまり学校では関わらないみたいなようだから」

なぜそんなところまでこの男は知っているのだろう


澪が自分から話すはずがない

監視役か…

手の回る人だ…どこまでわかって

私が恨んでいることなんて、見透かしているはずなのに自分の後継の息子と結婚させるなんて、狂っている


『お気遣いありがとうございます。』

そう言い、アイツが立ち上がると私の前に来て手を差し出す

その手を掴んで一緒に扉を出る

パタンとドアがしまった後、握られていた手を振り払おうとするけど離してくれない

『何?触らないで!汚い』

その言葉に男は何も発さないで私をじーっと見つめる


スーツ姿の彼に外で立っている女達はそんな態度をとっている私を睨みつける

女の嫉妬心は怖いものだ

離されない手をそのままエレベーターに乗り込むとホテルマンがボタンを押す

さっきの人だ

治療していない?!

手が緩まった時手を離してホテルマンの彼に駆け寄り手を掴む

やっぱり治療されていない

タバコの後は少しでも早急に治療しても消えることは無いと聞く

まだ若いのに…こんなの理不尽だ

「何をしている」

少し怒っているような声色だ

男から一旦手を離し1つ下の階のボタンを押し止まったエレベータにいた、男のウエイトレスに父親の娘だと主張して治療を頼むとペコペコして彼を連れて行った

ここは父親のテリトリーだから、あの態度を父親にとって、治療なんてしてくれるはずないことはわかっていたのに…

唇を噛み締める

黙っていた彼は私を覗き込み唇に手を触れようとするのを避けようとするけど男の力に叶うはずがなく腰を捕まえられヒールで男の足を踏み付ける

階に着くと男は降りるが私は降りようとしない…部屋でこの男と二人きりなんて絶対になってはいけない

何をされるか分からない

誰も助けてはくれない

エレベータを閉じようとすると腕で止められ無理やり抱き抱えられる

『やめて!』

「騒ぐな…何もしない、大人しくしろ」

そんな言葉信じない

部屋に連れ込まれるとベッドの上に下ろされる

男の頬を思いっきり叩く

「近づかないで…」

こんなベッドしかない部屋に黒瀬組長は私達を…気持ちが悪い

ベッドから立ち上がって男の肩をを押してソファに座らせると

男の方に片手を置いて視線を合わせ、もう片方の手で叩いて赤くなっている頬を手で触れる

あぁ…反吐が出る

この赤い瞳が今でも忘れられない…

殺したいけど楽になんて殺しわしない…

『ねぇ…どうして生まれてきたの?』

よくのうのうと生きてられるわね…

その問いかけに何も答えない

頬に触れている私の腕を骨ばった細い大きな手で掴む

いつでも父親は私をこの男に差し出すのだから今襲われてもいつかは襲われる…

でも初めてはこの男なんて許せない

だからもう手は打ってある

部屋から数人の男たちが出てくる