『……そうかい。悪いことを聞いたねぇ』

『いや、良いんです』

『……千風と言ったかい?自己紹介が遅れたね。僕は、風神の颯という。近くにいるのは、僕の妹の志奈』

颯がそう言うと、志奈は無言でぺこりとお辞儀をした。

『神様って、本当にいたんですね……』

『ふふっ。ここにいるのは僕と志奈だけではないぞ……皆、いるのだろう?』

颯が声をかけると、紺色の髪の女性と淡い黄緑色の髪の女性が姿を現す。

『……私は、雪を司る神様。名前はないから、皆からは雪と呼ばれている』

『私は、植物を司る神様の芽吹(めぶき)と言います!』

それぞれ自己紹介をすると、千風は『よ、よろしくお願いします!』と頭を下げた。

『そんなに固くならなくても良いよ。僕らは、人間と仲良くなりたいんだ。敬語はなしで良い』

颯はそう言って、千風に手を差し出す。千風は「……よろしく」と颯の手を握った。



千風はあれから毎日のように、颯たちに会いに行くようになった。

そんな毎日が楽しく、今日もワクワクしながら颯たちに会うために森を歩く……が、いつもは静かな森に、動物たちの鳴き声が響く。

(……何だ?いつもと様子が……)

千風は、鳴き声のうるささに耳を塞いだ。