「……トランスジェンダーか。性同一性障がいかと思ってた。確か、トランスジェンダーと性同一性障がいって意味が少し違うんですよね……トランスジェンダーということは、風音は手術を望んでないんだ……」

葉月がそう言うと、風音の父親は「風音の心の性を知っていたの?」と問いかけた。

「はい。風音が話してくれました……入学した時から、女の子なのに男子の制服を着ていることを疑問に思っていたんです。そういう僕も、風音と同じように男子の制服を着ているので、周りと同じことは言えないんですけどね」

「自由に制服を選べる学校が増えてきたとはいえ、ね……」

「……そうですね。僕も体の性と心の性が一致していないとはいえ、女か男かに当てはめて考えてしまいます」

「……葉月も不一致なの?オレも一致してないけど」

真冬の言葉に、葉月は真冬を見つめる。風音の母親は「類は友を呼ぶ、か……」と呟くと微笑んだ。

「そうだよ。僕は、中性という性別なんだ……って、真冬も!?」

「うん。オレは、無性。女と男の線上にいたくない」

「真冬ちゃんの性別は知っていたけど、風音のお友達ちゃんもXジェンダーだったんだね」

「えっと……僕は、榎本 葉月と言います」