私は元奴隷だ。



奴隷市場で当時8歳だった私をカルマのボスが買ってくれたことにより私の人生は大きく変わった。

ボスに買われてから、ボスやカルマの者たちから裏社会で生きる術を学び、私自身もカルマの一員としてできることから仕事を始めた。

19歳になった今も私はカルマの一員として裏社会で元気に生きている。

裏社会は表社会に比べてあまり明るいものではないが、ボスは私を人間にしてくれた。

ボスに買われなかったら私は変死していたっておかしくなかったし、死んでいるように、死にたいと思いながら強制的に生き続ける未来だってあったかもしれない。

だから私はボスに恩義がある。決して強制させられて裏社会を生きているのではなく、ボスの力になれるのならと私が自主的にそうしているのだ。

裏社会で生き続ける為には心を殺さなければならない。それができなければ必ず精神が壊れる。誰からも何をするにもまずはそれから教えられた。

だから私は初めて誰かを殺した時も、初めて誰かに抱かれなければならなかった時も必死に心を殺して自分が壊れないようにした。


だけど一つだけ心を殺せなかった仕事がある。


5年前、私が14歳の時に受けた仕事だ。
私が受けることになった仕事は自国のとある貴族であることを偽り、隣国に留学することだった。

そこで出会った隣国の王子様の偽りの恋人になったあの半年間だけ私は年相応の少女だった。