「エンリー! 大声を出したらリリエナが起きちゃうでしょ!」

エンリーを下敷きにして怒るのは、水色の毛並みをした、耳の大きな狐だった。水の下級精霊ピュアである。

ピュアの下敷きにされたまま「ぐぅ」と不満そうに唸って顔をあげたエンリーは、目の前に現れた真っ赤な毛並みの短足猫のような火の下級精霊ポメを見上げて助けを求めた。

ポメは短い前足を差し出して、よいしょよいしょとエンリーをピュアの下から引きずり出してくれる。

そうしている間にも、狭いリビングの中にぎゅうぎゅうになるくらいの下級精霊たちが集まった。

下級精霊たちは皆、小型動物のような姿かたちをしている。犬のような毛玉、猫のような毛玉、真ん丸な小鳥に、モルモットのような毛玉。色とりどりの毛玉たちが、もふもふもふもふと集まる様は、まるで手芸屋の毛糸の山のようだ。

ここに集まったのは全員が下級精霊たちだった。風、火、水、土、光――闇の下級精霊以外の、この世界に存在するすべての属性の精霊たちが集まっている。彼らは皆「リリエナを静かに見守り隊」のメンバーである。

ポメによってピュアの下から引きずり出された「リリエナを静かに見守り隊」の隊長であるエンリーは、再びテーブルの上でポーズを決めた。

エンリーの真似をして、「リリエナを静かに見守り隊」の隊員たちがピシッとポーズを取る。

「隊の心得、そのいーち!」