――なにか、たいせつなことを、わすれているきがする。

それがいったい何なのか、まったくわからないというのに、早く思い出さなくてはいけないという妙な焦燥に、時折ひどく胸を締めつけられる。

――わたしは、だれ?

夢の中でもう一人の自分に問いかけられるたびに、自分が自分以外の何かに塗り替わるような、恐怖とも安堵ともつかない、不思議な気持ちにさせられるのだ。



    ☆



「お前みたいな役立たずは、獣の餌がお似合いだ」

新しく魔導士ギルドのギルド長に就任したゴルゴドが、そののっぺりとした顔に嘲笑を浮かべて言ったのは、空が濃いオレンジ色に染まった夕暮れのことだった。

木々の合間から見える空の端っこは、青紫色に変わっている部分もある。

さわさわと聞こえてくるのは水の音だ。近くに川が流れているに違いない。

ディルバルグ国、王都リバイドル――