下唇を血が滲むほど強く噛む。


「行こう、リナ」


「うん!」


最後なのに、追われているのに、楽しかった。


まるで砂浜でじゃれあう恋人みたいに笑って走った。


おかげで涙も引っ込んでしまって――。


『私が、開花したら――』


その続きを聞こうとしたとき、追っての手が俺のリナの背中へ伸びてきた。


俺は一瞬ヒヤリとして、咄嗟に掴んでいるリナの手を強く引っ張った。


そのまま腕の中に抱きしめて……。


時刻が、2人のタイムリミットを刻んだ。


眩しい光がリナの体を包み込み、リナが痛みに耐えるように眉をよせる。


「リナ……」


「ありがとう、ナオキ君」


リナ……待って。


お願いって、なんだよ。