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天邪鬼な気持ちが交差するーー。

君にはもう嘘を吐かないと決めていたのに、また嘘を吐いていて……。一生隠すと決めたのに、つい言ってしまった。

「愛してる」

「っ……?」

「愛してるよ……」

演技をしながら、僕はずっと自分の本当の気持ちを言い続けていた。本当の自分では永遠に言えない言葉を、演技と偽って君に伝えていたんだ。

抱き締めていた力を緩めて少し身体を離すと、ツバサは目を見開いて僕を見つめた。
左右とも漆黒の瞳。母が作ったアイレンズを装着しているから心を読む能力(ちから)は発動していないようだ。内心ホッとして、人差し指でツンッとツバサの額を押す。

「僕の勝ちだね」

「あ……」

「アドリブに動揺するようじゃ、まだまだ。白金バッジはお預けだ」

本当は充分だった。
君の演じる(おう)はとても可愛らしくて、ドキドキして、ずっと見ていたくなる程だ。

でも。だからこそ、もう少し君を見させてーー?

白金バッジがエサでもいい。
君が僕に夢中になってくれるならーー……。

「……じゃあ」

「!……ミライさん!待って下さい!」

「……。なに?」

「あのっ……ありがとうございました!
サリウス王子との交渉の件も、今日の事も……。本当に、ありがとうございましたっ。
俺、頑張ります!絶対に次は負けませんから!」

何処までも真っ直ぐで、純粋なツバサ。
どうか、これからも変わらないでね?

「楽しみにしてるよ」

ツバサの頭を撫でて、「どうか無事に」と祈った。この子に降り掛かる不幸は、自分が全て引き受けたい、と……。

そして、ゆっくりと立ち上がって、背を向けると僕はその場を後にした。

……
…………。