そこに居たのは、ベッドに寝かされて、至る所に包帯を巻かれて、点滴や沢山の心電図の配線を着けられ、酸素マスクを着けられたツバサ。
元々色白だが、その顔色は今まで見た事ない程に悪くて……。

「ーー死ぬなっ」

何よりも先に、その言葉が飛び出していた。

「ツバサ、っ……死ぬな!
頼むッ……頼むからっ、死なないでくれーー……ッ」

そう言って、両手で包むように握ったツバサの手は本当に冷たくて……。死んでしまうのかと、思った。

僕は、この時初めて、神に祈った。
笑えるよね。これまで神や仏なんていない、って。何でも解決出来るのは自分自身だけ、って考えだった人間が、ここまで変わるんだから……。

ツバサがいなくなったら、生きていけないーー。

そう、気付いたんだ。

夢の配達人じゃなくてもいい。
ゾクゾクさせてくれなくてもいい。
ただ、生きていてくれるだけでいい。

それは、自分がツバサを愛おしく感じている事に他ならない感情だった。

……
…………でも。
そう気付いても、この気持ちを伝えるつもりなんてなかった。

両親の前で我を忘れる程に取り乱しながら、数日後に目を覚ましたツバサに僕は相変わらずの態度。

「人助けするんなら、今度はもっと上手くやりなよ。それでお前が死んだら、助けられた方もたまったもんじゃない」

ツバサの顔を見て心から安堵しながらもそんな言葉を吐いて、病室を後にしてから廊下で一人喜びと幸せを噛み締めてた。


僕がツバサに望むのは、
僕が帰って来た時に微笑って迎えてくれる事ーー。

疲れた時に1番に会いたいと望むこの気持ちは、僕が本当の恋を知った瞬間だった。
自分がそう思って、ようやくヴァロンさんがアカリさんを愛し、大切にしているのが分かったんだ。

だから、ツバサが夢の配達人を辞める時も、それならそれで良いとも思った。
危険な目に遭うよりも、元気に生きていてくれる事の方が僕には嬉しかったからね。


本当は大切に大切にしたい。
また接点が出来るのは嬉しいけれど、サリウス王子との勝負なんて受けないでほしかった。

『すぐに追い付きます。
そして、必ず追い越します……!』

でも、君が夢の配達人の(この)道を行くならば、やっぱり関わりたいと思ってしまうんだ。

……
…………。