まるで自分の事のように嬉しくて、誇らしくて。後ろから少しずつだが迫って来ているその存在に、僕はワクワクし始めていた。

もしかしたら、ツバサならあのゾクゾクする、恐怖のような快感をもう一度僕にくれるかも知れないーー。

そんな期待も、してしまっていた。

けれど、それよりも単純にこの日はツバサに会えるのが楽しみだった。
ずっと自分の任務が忙しくて、互いのスケジュールのすれ違いからなかなか顔を合わせる事が出来なかったこの一ヶ月程。期待の新人として、ツバサは今回少し難しい任務に臨む事になっていたが、彼ならば楽勝だと思っていた。
予定では自分の帰宅より前に終わっている筈だから、最高責任者(マスター)への報告が済んだら連絡をしよう。

胸を弾ませて足を運んだ事務所。
でも、そこで僕が知ったのはーー……。

「ツバサ君、今意識不明の重体なの……」

最高責任者(マスター)である父にたまたま報告に来ていた母から、そう告げられた。
何を言われているのか分からなくて、信じられなかった。

「任務先で事故があってね。ツバサ君、依頼人が連れて来ていた幼い子供を庇ってっ……、……」

ーー……は?
なに……なに……?っ……なん、だって?

頭が、全然ついていかない。
身体中の熱が一気に奪われて鈍る思考の中、必死に母が話す言葉を一個一個理解しようとする。

でも、僕が理解出来たのは、ツバサが危険な状態である事だけ……。

「……んで、……すぐくれなかった」

「!……ミライ?」

「っ……何ですぐに連絡くれなかったんだよッ!!」

生まれて初めて、両親の前で怒鳴り声を上げた。
すぐに事務所を飛び出したから顔なんて見る暇なかったけど、きっとさぞかし驚いてたんだろうな。

でも、どうでも良かった。
ツバサの事以外、どうでも良かった。

廊下を駆け抜けて医療施設へ辿り着くと、一番最初に出会った看護師にツバサの居場所を聞いてまた走った。面会謝絶だと止める言葉も聞かずに、止める人達を振り切って、駆け付けた。