白金色の髪、瞳が白金色と漆黒の虹彩異色症(オッドアイ)
ヴァロンさんがそのまま小さくなってしまったようなその子供に、僕は目を奪われていた。

あまりに凝視してしまったから、驚いたのかな?
ツバサは暫く僕の方を見ていたけど、サッとそっぽを向いて抱かれているアカリさんの胸に顔を埋めてしまった。

「こら、ツバサ!お兄ちゃんに"こんにちは"は?
……。ごめんね、ミライ君。この子、人見知りが酷くって」

「あ、いえ。気にしないで下さい」

二人の子供で長女であるヒナちゃんは、全く人見知りをしない子だった。屈託なくて、愛想も良くて。
長男のヒカル君もそんなお姉ちゃんを見て育ち、年子という事もあって常に一緒に行動していたからか、泣き虫ではあったけど人見知りではなかった。
でも、まあ、姉弟だからって、みんながみんな同じになる訳じゃないよな。

この時は、ただ単純にそう思っていた。

「あれ?もしかして、ミライでもダメか?
ツバサ〜ミライは優しいんだぞ?お姉ちゃん達だっていっぱい遊んでもらったお兄ちゃんなんだぞ〜」

ヴァロンさんが傍に寄って来てそう促すが、ツバサは首を横に振って僕の方を見てくれない。

ーー可愛くない。

ヴァロンさんにそっくりな顔を見た時は、まるで天使なのでは?と思うくらいだったが、ここまで嫌われたような態度をされたら正直面白くはない。
15歳も離れた幼児に大人気ない、と思われるかも知れないが、気持ちに余裕のない当時の僕はこの時ツバサを可愛いと思えなかった。

まあ、いいか。
別に子供一人に嫌われたところで、僕の人生が変わる訳じゃないーー……。

けれど。
そう思っていた僕に、ヴァロンさんからの衝撃の一言。

「参ったなぁ。
ミライにツバサ見ててもらってアカリとデート行こうと思ってたのに、これじゃあ無理か?」

「!……、っ……え?」

「知り合いから舞台のチケット貰ってさ。久々にアカリとデートしようかと思ってたんだけど、2歳児はどんなに静かな子供でもダメだ、って言われて……」

「……。
もしかして、僕に頼みたい仕事って……ツバサ君を見ててほしい、って事ですか?」

「え?ああ、うん」

頷くヴァロンさんの姿に、頭をゴーンッと金槌で殴られたようだった。