愛おしくて愛おしくて、堪らなかった。

この気持ちを理解してほしいなんて思わない。
性別など関係なく君を好きになりながら、今日女装した君を見て"もしも君が本当に女性だったら"と、愚かな考えを抱いてしまった僕を、どうか殴ってくれ。

そんな叶う筈のない馬鹿な願いを望んでしまう程……。ツバサ、君を想っていたんだと気付いてしまった。


別に、多分だけど、生まれつき女性よりも男性に興味があった訳じゃなかったと思う。
……と、言うか。物心ついた時から夢の配達人になりたいと思っていた僕は、恋愛よりも将来の夢に向かって必死で、出来る事が増える事に何よりも喜びを覚えて、胸を震わせていた。
当然、同級生とは勉強も運動もレベルが合わなかったから次第に孤立していって、誰かと一緒に居ても満たされる事なんてなくて……。それなら、将来の為にたくさん修行して、自分が成長していく事を実感する方がずっとずっと楽しかった。

でも、ある日ーー……。

「ヴァロン。息子の、ミライと言います」

7歳の時、父に紹介されてその人に会った瞬間。
息が、上手く出来なかった。

「は、初めまして……!」

やっとの思いで絞り出した声は、まるで自分のものじゃない位に高くて……。僕は自分が緊張しているんだ、って信じられなかった。

目の前に居たのは、引き受けた夢は必ず叶える、伝説の夢の配達人と謳われていたヴァロンさん。
その評判や評価は当然知っていて、ずっと憧れを抱いていたのは本当だった。
父の友人だと知った時から、何度も「会いたい」ってせがんだ。

でも、僕はこの時初めて、ヴァロンさんの本当のすごさを実感した。

なんて、綺麗な人なんだろうーー……。

白金色の髪と瞳。
同じ人間なのに、まるで別世界の……。次元が違う存在に感じた。

直視したいのに出来なくて。
ヴァロンさんはただそこに立っているだけなのに、これ以上一歩も近付けない程の存在感があった。