「っ、……いいんですか?
大切なバッジ、そんな簡単に譲って」

「簡単には譲らないよ。
言ったでしょ?僕を驚かせるような演技を君が出来たら、だよ」

震えずにはいられなかった。
やっとの思いで言った言葉は、まるで"今の君に出来るの?"と言いた気に、返される。


相手は白金バッジで、その中で1番(トップ)にいるミライさん。
勿論、今回俺が挑んでる下剋上はランダムだから、ミライさんが最後の相手になるという確定はなかった。

でも、まさかこんなに早く?
自分が1番強敵だと思い、そして誰よりも挑みたかった相手に挑めるのかーー?

白金バッジは3人。
一年という限られた期間の中で目標を達成する為には、いかなる場であろうがチャンスをものにして、少しでも早く上位の人達からバッジを奪っておく必要があった。

今の自分がミライさん相手に格闘とか言われたら無謀だったが、演技なら……ゼロじゃない。


「心は決まったみたいだね」

震えが止まった俺を見て、ミライさんが微笑む。

「二言は、ないですよね?」

「もちろん」

そう言うとミライさんは白金バッジをポケットにしまい、それと取り替えるように夢の配達人が連絡用に使う通信機を俺に見せる。
通信中と表示された画面。相手は……。

「今までの会話は、全てノゾミに筒抜け。
彼女が全ての証人だ。不満はないだろう?」

「ありませんね。適任過ぎて、何も言えません」

俺とミライさんは二人でフッと微笑って……。
けど、すぐに気を引き締めて真顔になった。

やっつけるなら、1番強い相手からーー。

幻だと言われたあの日の下剋上が、今、ここで始まるんだ。

……
…………。