『札束を積み上げる事に喜びを覚える夢の配達人には、絶対になるな。
その向こう側にある、本当の幸福に気付ける配達人になれ』

ツバサのお父さんの言葉の意味が、まさに今ボクの目の前に広がっていた。

もし、コハルさんが攫われていたらこの幸福はなかった。
もし、千秋楽を演じていたのがツバサだったら、例えカーテンコールに出られたのがコハルさんであったとしても、ここまでの幸福はなかった。
彼女が全部、全ての公演を……(おう)をやりきったからの幸福。

一つでもピースが欠けていたら、この幸福はなかった。
それが、コハルさんからナツキさん。観客や団員のみんな、全ての幸福に繋がった。

そして、この全ての幸福の背景にあるのは……。

『最高の仕事するから。最後まで見てて』

そう宣言した、君が居たからーー。


「……ははっ。なに、コレ。
こんなの見せられて、こんな感情教えてもらって……。好きにならない訳、ないじゃんっ」

もう、認めるしかなかった。
自分の恋が、すでに始まっていた事を……。

ーー見付けた!!100点満点ッ!!

きっとあの日、あの瞬間から始まっていた。

「ボクの能力(インスピレーション)は、正しかったんだね」

首に掛かっているロケットペンダントを握り締めながら、ボクはそう呟いた。